半導体とは、銅や鉄などの導体とガラスやプラスチックなどの絶縁体の間、シリコンなどの少し電気を通す素材のことを指します。
今、この半導体という素材が世界の覇権を握る上でとても重要になっています。
位置づけとして今までの原油に相当するものと考えるとわかりやすいと思います。原油がなければ、車は走らないし、電気も今ほど使うことはできません。また量産された衣類や、プラスチック製品なども作れないことは簡単にイメージできるでしょう。
このように原油がないだけで、私たちの生活はまるで変わってしまうように、半導体は、それなしにはこの先の未来を創っていくことができないような社会基盤となる素材なのです。
また半導体は当然軍事にも使われるので、その性能次第で国の軍事力が大きく変わってしまいます。だから高性能の半導体を確保することは国家安全保障を維持することと同義であり、その意味でも半導体を握ることが世界の覇権を握るということの所以なのです。
だからこそその半導体をめぐって今、世界が、特に米中欧が鎬を削って競い合っているのです。
時は少し遡り2018年、世界の通信規格が5Gへと移行していく中で、その5G基地局で使われていた製品の34%は中国の通信機器メーカーであるファーウェイの製品でした。通信は経済や軍事の生命線であり、それを中国が握るということは、中国が世界の通信の遮断や情報の抜き取りができるということになります。実際、その可能性を示唆する事件もあったようです。
そのような状況に焦ったトランプ政権は、2019年、アメリカから中国への半導体輸出を禁止する禁輸措置を下したのです。ところが、その頃中国は台湾からも半導体を輸入していたのでアメリカは思うようにファーウェイを追い詰めることができませんでした。
しかし2020年トランプ政権はさらなる制裁に踏み切り、米国製の機器やソフトを使って製造した半導体をファーウェイに輸出することを禁じ、それを外国企業にまで適用させました。これによりファーウェイはそれまでの半導体サプライチェーンを断たれ、息の根を止められることになったのです。
台湾の半導体メーカーは通称TSMCと呼ばれ、世界最大手の半導体製造会社であり、回路の性能を表す規格が3ナノ、2ナノと世界のどの企業も追随を許さないほど高い技術力を誇っていました。TSMCは世界中に顧客を有し、その影響力は一度半導体の価格を上げると発表したなら世界中が震撼するほどです。
そんなTSMCからの半導体をファーウェイが入手できないようにさせたということは、トランプ政権は文字どおりファーウェイの首を締めたということになるのです。
これが米中半導体戦争の始まりです。
このような制裁を受けると、中国もやられっぱなしではありません。自国内で半導体供給ラインを確保する動きをしながら、その気になれば目と鼻の先の台湾くらいは軍事的に侵攻できるということを見せつけてくるようになったのです。
米政権交代後、バイデン政権はこの状況に対してドイツなど欧州各国と共同で艦船を台湾海峡周辺、東シナ海、南シナ海に送り込みます。このようにして台湾海峡の緊張が一段と高まっていったのです。
そしてさらにバイデン政権は、中国への制裁と台湾の守りだけにとどまらず、国家安全保障のために自分の国に欠けている半導体製造技術を、TSMCやサムスン電子をアリゾナへと誘致することで補完するようにし向けました。国内で半導体の設計と製造、使用のサイクルを完結できるように手配したのです。
その工場建設は今年2022年から24年に行われる予定で、それ以降本格的に稼働するとのことです。
このように台湾を中心に米中欧が半導体の覇権をめぐって対峙しており、ロシアのウクライナ侵攻と相まって今後の行方が気になるところです。
もちろん半導体産業には製造技術以外にも、設計技術や製造装置の技術など各分野で強みをもつ企業が存在します。それらの企業を持つ国はその強みを活かしつつ、米中覇権争いにどのように関わっていくのか様子を伺っているのです。
日本は製造機器や素材で競争力を持っており、それらはチョークポイントにはなるものの、従属的な立場であることには変わりありません。半導体産業における日本の存在感は弱いといってよいでしょう。
しかし、研究段階ではあるものの最先端になりうる技術もあるようです。TSMCで手掛ける2ナノという最先端の半導体製造技術はそろそろ限界に近く、次世代の技術研究がTSMCと東京大学共同で進められているのです。その内容は、今までの平面の回路を3D化させることでさらに集積度を上げていくという挑戦です。
また「半導体の民主化」と呼ばれるアイデアもあります。これは誰もがプログラミングをするだけで半導体チップを作れるようなツールであり、成功すれば半導体産業の構造自体に大きな変化をもたらすことができると考えられています。
そしてさらにはNTTが開発を進める光の半導体なるものもあります。今までの半導体は電気の流れを制御して機能していましたが、これをそのまま光の回路に置き換えるというものです。この技術が実用可能になると、これまでにない超低消費電力、超高速処理で半導体が動くようになります。
今後IoTやメタバースなど5Gが普及するにつれ、ビッグデータを保有するGAFAなどの中枢であるデータセンターの電力消費とデータ処理量は爆発的に増えていくでしょう。そのときにこのような光の半導体は大活躍することができるのではないでしょうか。
以上、ここまでが半導体をめぐる世界の情勢と研究段階の半導体の話で、面白いと思った部分をピックアップして書きました。
ここからは全体を読み終えての感想を書いていきます。
私が思うに、未来の主導権を握る半導体ひとつに各国の軍が動くというのは、かなり緊迫した状況だと思います。
人間はそれなりに賢い動物なので、その半導体をめぐり自らを滅ぼすような戦争はしないだろうとは思います。しかし回避した先、行き着くのはエントロピー無限大の超格差社会であることは間違いないでしょう。
この経済戦争において、ずっとこのままどっちつかずという状況は物理的にあり得ません。どこかで必ず対称性が破れ覇権を握る企業や国が現れます。
半導体の覇権を握ったところは世界の社会基盤を握ることになるので、自由に世界を編集・デザインできるようになりますが、主導権をとれなかったところは時代の流れの中に消えていってしまうのではないかと思います。
先ほどの3D回路や光の半導体が実用化されたとしても、サイバー空間や半導体のサプライチェーンを支配する企業や国が覇権を握るので、このままいくとどちらにしても日本の存在感は消えていくでしょう。
そしてこれから到来するであろうIT社会でさらに問題なのは、そのように国と企業が覇権を握った世界で生きる個人の心です。
というのは少し前までなら経済的な貧富の格差程度で済んでいましたが、IT社会における格差はそれにとどまらないからです。
その格差は、一部の裕福な人たちが進化した技術を使いこなし全てを支配する一方で、貧しい人たちは社会的な価値を生まない無用者階級へと転落していく今までに見たこともない格差です。そして進化した技術を使いこなす一部の人たちがそれで幸せになるのかというと、おそらくそれもイエスとは言い難い状態になっていくとのこと。
このことは以下記事にて部分的に書いています。
hyperconnection2012.hatenablog.com
このように格差は放っておけば広がる一方なので、今の延長線上の未来には本当の豊な暮らしはないと言えると思います。
そしてこのような問題の唯一の突破口は、令和哲学であり世界基軸教育です。この教育コンテンツは、別の表現をすれば心半導体を案内するものです。
半導体は0と1の組み合わせによって起動しますが、心半導体はその0と1さえも生み出す源泉にアプローチするので、全ての格差を一掃する世界と出会うことができるのです。そしてその全ての格差を一掃した状態で0と1を自由に行き来できるので、格差のない世界から格差を楽しむことができるようになるのです。
心半導体は日本発のコンテンツであり、それによる心路(信頼関係)がインフラとなるので日本は別の次元で半導体の覇権を握ることができるようになります。そして個人はどうなるのかというと格差がなくなった状態で違いを楽しめるようになるので、本当の意味で幸せを獲得することができるのです。
本日も最後まで読んでくださりありがとうございました。